仙台高等裁判所 昭和28年(う)477号 判決
しかし、刑法第二百五十二条第一項の横領罪が成立するためには、物の占有の原因が委託関係に基くことを要するけれども、その委託関係は必ずしも当事者間の委託行為に因る場合に限らず、信義誠実の原則上委託関係ありと目せられる場合をも包含するものと解すべきである。原判決挙示の証拠によれば、原判示第一の事実中所論委託関係は右の意味においてこれを肯認するに足り、又かかる意味の委託関係にある本件金品を被告人と相被告人松本米雄とが相談の上他に不法処分することに決めて拐帯した事実も優にこれを証明し得るから、原判決が横領罪を以て問擬したのは相当であり、更に記録を精査しても原判決の右事実認定に過誤あることを疑うべき事由は存しない。松本の騙取した金品を被告人において情を知りながら所論の如く処分したもので賍物罪を構成するに過ぎないとの所論は、証拠に基かない主張であつて、採用できない。なお、原判決は横領の事実を認定していること極めて明白であるから、原判決が詐欺の事実を認定したとしてこれを非難する縷々の所論は、既にその前提を欠き失当である。